2018年4月26日木曜日

問題行動:攻撃・他害は減少すれば良い?

 最近スポーツ界では、パワハラとか傷害事件とか、他の人への攻撃行動の報道が頻繁に起こっていますよね。スポーツ界を離れて、行政の偉い人までセクハラ行動で問題になっています。こういった問題行動は今に始まったことではなく、特に昭和には当たり前に見られていたことですよね。スポーツ界とか政界とか、それぞれの業界によって許容されてきた問題行動を、やっと今になって問題と理解するようになり始めたと言っても良いのではないでしょうか。しかし、スポーツ界でも行政の長でも、日本を代表するような優れた知的能力や身体能力を持った人達ですよね。その人たちが、態度が悪いからと言って殴るとか、自分の監督から外れる人に嫌がらせするとか、立場の弱い人に「言葉遊びをする」とか、そんなくだらない行動を取るというのは、不思議でもあります。優秀だろうが能力が高かろうが、「人間ってみんな平等なのね」とちょっと思ってしまう。
 他の人を傷つけてしまう他害というのは、問題行動の中でも特に深刻な行動です。他害で気を付けなければならない点は、「他害は減少させれば良い」では不十分であることです。パワハラとか障害とか、そういったことが表に出るには、すでにたくさんの報告されていない問題行動が起きていたはずで、しかも、たくさんの人がその現場にも居合わせて見ていたはずです。そして「あの人がすることだから」とか「きっと他の問題でイライラしていたから」とか、何らかの理由をつけて、それが許容されてきた来たはずなのです。小さな嫌がらせでも、嫌がらせは嫌がらせなのです。「1回でも、どんな状況でも、人を傷つけることは許されてはいけない」という認識を私たち全員が共有する必要があるのです。「誰かが我慢すればよい」と言う時代は終わらなければいけないのです。
 療育の正解で私が専門家として自立した初めての頃に職場の上司から言われたことを、今でも守っています。「他害は絶対に0にしなければならない」と言うルールです。「他害は減少させれば良い」では、少ない回数で起こる攻撃行動をそのまま少ない回数で起こるように強化してしまっているのと同じと言うことなのです。行動によっては、低い頻度で起こることを強化維持すればよい場合もあります。例えば指示に従わずに笑ってしまうとか、悪口を言うとか、そう言った行動は頻度が低ければ問題ではないのです。しかし、他害は1回でも起こってはいけないのです。そのまま継続させていると、長期的に継続して強化されてきた行動ですから、ゼロにすることがさらに難しくなります。
 他害・攻撃行動を許容してしまうことは、教育界の中では、思ったよりもよく見られます。私の教室に入ったばかりの生徒さんの中には、何か嫌なことがあったり、欲しい物が手に入らないと、お母さんを叩いたりつねったりすることがあります。ここで典型的に見られるのは、「痛い。やめてよ。」などと口にしながらも、お母さんは真剣にそれを注意する様子もなく流してしまうことです。私がそれに気づいたら必ず子どもの今やっていることを止めて、「お母さんは大切。絶対に叩かない。」と注意します。それ以上起こるのであれば、それぞれの状況や理由によって対策を考えますが、まずは「絶対に許容しない」と言う姿勢が大切なのです。私が子どもから叩かれて、それを真剣に注意すると、「幼い子どもになんて大人気ない」という風にも見えるかもしれません。しかし、攻撃行動を続ければその子が加害者になり続け、1回でも他の子を叩けば「あの子は叩くから」と近寄られなくなってしまう可能性もあるのです。子どもにとって一番大切なことは、攻撃行動を一刻も早く、ゼロにすることなのです。
 人によっては「ABAは無視をするのかと思った」とか勘違いされることもあります。ABAは行動が起こるその理由によって対処を変えますし、他害に関しては「絶対にダメと言わない」と言う選択肢はないと私は考えます。「ポジティブに誉める教育が大切」などと言われる方もいます。その通りですが、適切な他の行動を誉めるという対処で問題行動がゆっくりと減少し、タイムアウトなどの厳しい対処をすると、比較的問題行動が早くゼロになっていく可能性があるのであれば、それを保護者に伝えていく、インフォームドコンセントが必要になると思います。もちろん通常はほめて、ほめて、ほめて、を繰り返していますが、場合によっては、厳しめの対処と言うものが長期的に子どもの利益につながることがあると、当たり前のことを専門家も言わなければいけないです。
 これはスクールカウンセラーをやっていた私の知り合いが言ったことですが、生徒が家庭でお母さんに暴力をふるうケースがあって、子どものお母さんによっては「私が我慢すれば良いのだから」「ストレスが溜まっているようだし、これぐらいは良いのでは?」のようなことを言われる場合もあるそうです。この場合「将来この子が結婚して、ストレスがたまったら、どうするんですか?」と尋ねるそうです。その子のためを思うなら、できるだけ早期のうちに、場合によっては厳しい対処を使っても、行動をゼロにすることを前提として何かをし始めることが、一番なのです。

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