ABA療育の早期療育は週何時間が良い?

 自閉症のお子様に対するABAの早期療育とは、だいたいどれくらいやれば効果があるのでしょうか?通常は、1日何時間くらいするものなのでしょうか?結論から言うと、基本的に研究で効果があるとされているのは、週に20から25時間なのです。土日は除いて、月曜から金曜まで1日5時間ずつ毎日療育するということです。かなり大変な時間の作業ですよね。この時間を聞いたことがある方も多いと思います。英語では、Early Intensive Behavior Intervention (EIBI)などとも言われ、幼いうち(早期、Early)に、集中(Intensive)して、行動(Behavior)の介入(Intervention)を行う、という意味です。
 最近では、特に東京近辺ではABAの療育をするとう療育機関が少しずつ増えてきています。では、日本では1日5時間、週25時間程度の療育をされているところは、どれくらいあるのでしょうか?私の知っている限り、ほぼないと申し上げて良いでしょう。どうしてでしょうか?結局のところ、資金の欠如というところが一番大きな要因でしょう。週25時間、子どもにABAの療育を出そうとすると、しかもトレーニングを受けた専門家を含んだ療育のチームを用意するとなると、年間1千万円以上の金額になったとしておおかしくはないでしょう。ただし、裕福な家庭は日本にもあるはずです。裕福な家庭は、こういった療育を行っているのでしょうか?アメリカでABAのサービスを長年提供してきた老舗の企業が、実は過去に日本にも参入したことがありました。もちろん裕福な家庭のみの対象ではありますが、ABAの療育を提供しようとしました。しかし日本では成功せずに、数年で撤退しました。同じ企業が、アメリカだけでなく香港や他の土地では成功を収めて、現在も存続しています。日本だけで成功しないというのは、残念な結果ですね。日本で本場アメリカの老舗の企業が提供するABAのサービスが成功できなかった理由はさておき、こうした過去の経緯もあって、現在日本では週に2時間から、多くても10時間という時間のABAのサービスを提供する企業がほとんどです。これは一体どういう意味なのでしょうか?
 医療の例を取り上げれば、例えば腰痛に効果的な薬があったとします。研究で毎日5mgを、一週間に25mgを投与することが効果的とされているとします。全員には効果がないけれど、場合によっては1、2年で劇的に痛みを解消するとします。しかし、まだ健康保険が適応されないがために、この量の薬の投与を継続するには、年間1千万円かかるとします。では、お金が足らないからといって、1週間に2mg投与しますか?だいたい、効果の認められていない量での薬の投与が医学会で認められるとは思いません。少ない量では、せっかく効果があることも、効果がないかもしれないからです。
 現在私の運営・監督する教室でも、最大週に8時間しか療育が受けられません。「ABAをやってみたい」という要求(需要)は多いものの、専門家がすすめる(研究で証明されている)週に25時間をやりたいという要望は、ほぼないのです。苦肉の索として、実際の専門家による療育時間は少なくても、保護者の方のどなたか(ほぼお母様)に私の提供する1回2時間の療育に参加していただくことで、その療育をご家庭でも継続してやっていただくことで、できるだけ1日5時間(週25時間)の効果に近づけたいという方法を取っています。しかし、児童発達支援事業として認可を受けて金額的に10分の1近くなった今でも、週に1回だけとか、1月に1回や2回だけ、というようなご要望があると、私の説明不足・啓発不足が悔やまれてなりません。
 また、私はABAで博士号を取得しており、10年以上の経験があります。この教育と経験を持った竹島であれば、月に1回の療育でも効果があるような幻想を与えてしまうことがあるようです。私の療育は、それをご家庭でお母様・お父様が継続してやっていただかなければ、効果はありません。また、私が教育や経験の少ないセラピストをスーパーバイズ・監督して、その人が継続的に療育を行うことで、効果的な療育を行うこともできます。実際のところ、研究では私のような博士号を持ったセラピストが直接療育を行うことは皆無です。それは、お医者さんに毎日診て欲しいと要望するようなもので、現実的でないからです。代わりに、経験があり教育を受けた人がスーパバイズすることで、そこまで教育や経験のない人が療育を行っても、効果があることが証明されているのです。
 できるだけ皆様に、科学的な事実に基づいた情報が届けられることを、そして本当に効果的な療育ができるだけ多くの方に届けられることをこれからも願っております。

コメント

  1. 質問させてください。
    ここでいう「効果」とは、IQの上昇のことでしょうか?
    高機能自閉症に対しても、25hの療育で効果が得られるのでしょうか?それはどのような効果でしょうか?

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