知的遅れのある子の個別目標

 新年の抱負は立てましたでしょうか?私はフランス語で「はらぺこあおむし」の絵本を読んでうちの息子に聞かせたいと思いつつ、すでに3日坊主で終わるような気もしている今日この頃です。なんでフランス語?意味はないです。特に子どもにフランス語を教えようという気もないので、私の趣味です。なんとなく面白そうな気がしません?フランス語で「はらぺこあおむし」を読んでいるのをYouTubeで検索すると、何人かの子(多分フランス人)によって読まれたバージョンがあって(画像は絵本のままです)。本文にはないのですが、絵本の最初と最後に、多分葉っぱを食べる音を表現したであろう言葉が出てくるんです。英語で言うところの、crunch crunch (クランチクランチ:ポテトチップス等固い物をバリバリ食べる音)に近いようなことだと思うんですけれど、フランス語のRの音って特別ですよね。それがどうにも日本語のカタカナではとても表現できない音で、子供が言っていると特に可愛いんですよ。皆様も見てみてください。
 知的に遅れがあるというか、早期療育をしても普通学級に行くほどは知的な能力が伸びなかった場合、その後の目標に困る場合が多くあります。というのも、早期療育の段階の目標は、模倣だったり、マッチングだったり、物の名前を識別・弁別することを教えたり、定型発達になるべく追いつくための療育です。ABAには多数の教科書的な本も存在するので、比較的簡単にそこの中から目標を選ぶことができることが多いです。しかし早期療育がおわると急にそう言った教科書的な存在が少なくなってしまいます。その後の方向性は、必ずしも定型発達に追いつこうとするのではありません。それぞれのレベルで、将来子供がなるべく生活面・経済面でも自立していくようにスキルを教え、その子の世界を広げていくことになりますが、まあそれは定型発達の子供と同じ方向性ですね。
 私の場合、1)お勉強的なこと(読み・書き・算数)、2)人とのコミュニケーション、3)生活関連・身体自立のこと、4)趣味・自由時間のこと、5)人と一緒の活動や体を動かすこと、この5つは欠かさないように行きます。もちろん、学校で行われるべきなこと、家庭で行われるべきなこと、塾や課外活動的に行われること、などあるので、親が全てを教えるということではなく、それら全ての場面の学習を合わせるとこの5つの領域の全てがカバーできるように気をつければ良いのです。
 今までの「模倣」や「マッチング」や「物の名前を識別・弁別する」などを目標とするのではなく、そいうったスキルはスキル単独で教えるのではなく、実際の場面で実際に役立つように教えていくことになります。例えば、趣味や体を動かす領域の目標として、「踊り(妖怪ウオッチ体操、エビカニクスなど)を3つ踊る」という目標があれば、その中で模倣のスキルが使われても良いし、使われなくても良いですし、エビやカニの名前の識別がついでにできても、できなくても良いです。実際に使われる場面を大切にするというのは、定型発達の子供にも役に立ちます。ただ化学を教えるのではなく家庭にある重曹とお酢を混ぜるとどういった化学反応を起こして掃除に役立つのか、家庭で役立つ形で教えていくと、化学も面白いものになります。実際に合戦のあった場所に行って見ることで、歴史を面白いものにするかもしれません。
 DTT(ディスクリートトライアル)というタイプのABAの早期教育をたくさんやってきたご両親に良くある間違いは、実際に使えないお勉強の部分の割合を比較的多く取ってしまい、あまり本人の生活に直接役立たないことを続ける結果になってしまうことです。(DTTが良くないという意味ではありません。陥りやすい間違いがある、というだけです。)また、上記の領域の4と5の、4)趣味の時間、5)人とのやり取りに時間を使わなかった結果、放っておくとウロウロとばかりしてしまう(もしくはすぐに問題行動を起こす)場合が多く見られます。実は特に自閉症の場合、興味の幅が非常に狭く、新しいことが嫌いなために、放っておくと自分では楽しいことが見つけられない場合が多く、療育でかなりの労力と時間をかけて、楽しいことや、やりたいことを増やすことに焦点を置かなければいけない場合が非常に多いのです。勉強に力を入れた結果として、自由時間になるとお勉強の道具をお母さんのところに持ってきて、よっぽどお勉強が好きなのかと思えば、実はただ他に楽しいことがない、それ以外活躍の場がない(人から適切に注意を引いてもらう場がない)、という悲しい事実にぶつかることも多いのです。
 知的に遅れがあっても、なくても、(それぞれのレベルは違うかもしれませんが、)実はあまり変わらないことが多いと思います。子どもそれぞれが充実した生活を見つけるために、楽しい活動を見つけるためには、活躍して皆から褒められるにははどうしたら良いか?を一緒に考えることがまず最初です。そしてそれに合わせた目標を見つけることが大切になります。

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