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将来の学校教育に向けて、集団療育を考える

 家から徒歩30秒の教室から、電車に乗って通勤する教室に移動し、はや3ヶ月目です。実は私は中年になるまで今まで一度も通勤電車というものに乗ったことがないのです。朝の通勤電車も面白いですよね。人生経験が大切だ。気が付いたことは、名古屋は満員に近いくらい人が多くなってきても、車両の奥に人が流れていかないんです。ですから、車両のドア付近に人がたくさんでも、奥の方は以外と空いていたりします。東京では毎朝とんでもない人の量ですから、奥に人を入れないという選択肢は絶対にあり得ないのですが、名古屋ではドア付近に乗っいる人はそのまま奥に移動せず、次に人が乗って来ようとしても場所も開けてくれません。「なんで場所開けてくれないの?」といつも思いながら人を押しのけて毎日電車に乗ります。所詮名古屋人は他人のことなんて、どうでも良いのでしょうか?  よくよく考えると、名古屋の人は東京のように大量の人に慣れていないからかな、とも思います。名古屋の(少なくとも私の乗る)電車は最初からそんなに満員にならないのです。東京のように押し込んで人を乗せるところとは違うのです。一度大雨で電車が遅れた時も、いつもと比べれば超満員なのですが、電車の奥にはそれほど人が流れないままドア付近だけ人が詰め込まれるために、結局人が乗れないままドアが閉められてしまいました。乗る人も、「次の電車に乗れば良いか・・・」程度なのか、皆我慢して次の電車を待っていました。いや、一人だけいました。怒って柱を蹴っていた人がいました。びっくりしました。人前で柱を蹴るなんて・・・そっか、そんなに電車乗れなかったのが辛かったんだ・・・。もしや、うちの教室に来る系かしら・・・。これが東京だと、「乗れないから、次の電車に・・・」なんて言っていたら、1時間待っても電車に乗れないですよね。みんなどんどん押して車両の中までぎゅうぎゅう詰めにしますよね。やはり東京のような場所に住むと、大量の人にどう対処して良いのか徐々に学ぶのでしょう。  新しい教室に来て、場所が広くなり、やや大きめのグループを作ることができるようになりました。素晴らしいことです。気づいたことですが、2人のグループに慣れている子が4人になると、4人のグループに慣れている子が6人になると、人数に合わせた行動ができずに、これまで問題行動がなかったお子様にも問題行動が出ることもあるのです。

ABA療育の早期療育は週何時間が良い?

 自閉症のお子様に対するABAの早期療育とは、だいたいどれくらいやれば効果があるのでしょうか?通常は、1日何時間くらいするものなのでしょうか?結論から言うと、基本的に研究で効果があるとされているのは、週に20から25時間なのです。土日は除いて、月曜から金曜まで1日5時間ずつ毎日療育するということです。かなり大変な時間の作業ですよね。この時間を聞いたことがある方も多いと思います。英語では、Early Intensive Behavior Intervention (EIBI)などとも言われ、幼いうち(早期、Early)に、集中(Intensive)して、行動(Behavior)の介入(Intervention)を行う、という意味です。  最近では、特に東京近辺ではABAの療育をするとう療育機関が少しずつ増えてきています。では、日本では1日5時間、週25時間程度の療育をされているところは、どれくらいあるのでしょうか?私の知っている限り、ほぼないと申し上げて良いでしょう。どうしてでしょうか?結局のところ、資金の欠如というところが一番大きな要因でしょう。週25時間、子どもにABAの療育を出そうとすると、しかもトレーニングを受けた専門家を含んだ療育のチームを用意するとなると、年間1千万円以上の金額になったとしておおかしくはないでしょう。ただし、裕福な家庭は日本にもあるはずです。裕福な家庭は、こういった療育を行っているのでしょうか?アメリカでABAのサービスを長年提供してきた老舗の企業が、実は過去に日本にも参入したことがありました。もちろん裕福な家庭のみの対象ではありますが、ABAの療育を提供しようとしました。しかし日本では成功せずに、数年で撤退しました。同じ企業が、アメリカだけでなく香港や他の土地では成功を収めて、現在も存続しています。日本だけで成功しないというのは、残念な結果ですね。日本で本場アメリカの老舗の企業が提供するABAのサービスが成功できなかった理由はさておき、こうした過去の経緯もあって、現在日本では週に2時間から、多くても10時間という時間のABAのサービスを提供する企業がほとんどです。これは一体どういう意味なのでしょうか?  医療の例を取り上げれば、例えば腰痛に効果的な薬があったとします。研究で毎日5mgを、一週間に25mgを投与することが効果的とされてい

2016年日本行動分析学会ポスター発表

 大阪市立大学で行われた日本行動分析学会に参加してきました。日本の行動分析学会では、私は特にポスター発表が好きなんですよね。発表の質が良いということも理由の一つなのですが、参加者(聴衆)が一つ一つのポスター発表を真剣に聞いてくれている感じが良い。アメリカの学会のポスター発表はなんとなく社交場なイメージがあって、終了15分前にはみんな片付けていなくなっちゃうこともあるのですが、日本のだと時間が終わってもみんなまだ真剣に話し込んでいる。発表者も楽しそうです。  今回の私のイチオシは黒田君のゼブラフィッシュの発表ですね。(黒田君って言っても、愛知文教大学の専任講師の黒田敏数先生です。)ゼブラフィッシュの何がそんなに面白いのかと言うと、黒田先生曰く、ゼブラフィッシュは染色体の中身が完全にわかっている生き物の一つで、そのために医学の分野などでは個体の違いが完全に把握できる研究対象として、ネズミや他の動物よりも最近注目を浴びている動物なのだそうなのです。行動分析の分野での基礎研究ではネズミや鳩の研究が多く、ゼブラフィッシュの過去の研究はほとんどわかっておらず、行動の特徴などもこれから解明するしかないようです。しかし、行動の科学で培われた研究方法を使ってそういった動物の行動を研究することで、医学やその他の分野では解明されなかった事実が解明されることもあるように思います。何よりも黒田君の発表の表情が本当に楽しそうで、やはり新しい誰もやらない分野の喜びというものがあるのでしょうか?まあ応用の分野にこういった基礎研究の結果が反映されるまでには10年単位の時間が必要なのでしょうが、やはり日本は基礎研究が得意ですし、新しい発展を期待したい。  もう一つは、常磐大学の助教授の菅佐原先生の携帯アプリにおけるゲーム場面での課金行動の研究ですね。「ゲームの課金行動」って・・・・こうなると自閉症とは一切関係がないようにも思われますが、うーん、やっぱり普段ない知的な刺激を求めているのでしょうか?  とにくかく、基礎研究の方の言われる意見というのは、刺激がある。普段臨床現場では当たり前に無視してしまっている大切な行動の原理や、当たり前にやっているが何の科学的実証もない習慣など、「やっぱり行動の科学をやっている人として、おかしいんじゃないの?」と単純な疑問を率直に投げかけられてしまうのです。  よ

NHK「あさイチ」で取り上げられたABA

 今日6月22日(水)にNHKの「あさイチ」でABAが取り上げられました。過去にテレビで自閉症が取り上げられた際には、比較的短い放映時間で、しかも半分以上「早期発見が大切」とか「まだ実用化されていない最新研究」などが大きく幅をとってしまって、「ABA」という言葉も出てこなかったり、「診断を受けてから、親が子どもにしてあげられる教育」にはあまり焦点が置かれないこともありました。今回は「発達障がいとABAについて」の特集だったからでしょうか、ABAとABAを使った実際の療育の場面が、1時間以上も紹介されており、非常に満足できる内容だったと思います。例えば、専門家の元で指導を受けながら療育を続ける親の姿、療育を受ける前とその後の様子、特に「褒める」という言葉を使ってABAの療育が紹介されていました。また、自閉症だけではなくADHD/ADDやLDも含めた発達障がい全般に向けての情報になっており、よりたくさんの方へ向けて発信されたことも良かったと思います。今後朝の時間ではなく、いろんな方が見られる夕方以降の時間で放映される番組でも紹介されるようになると良いですね。出演されたご家族の方、専門家の方もお疲れ様でした。  今現在でも、自閉症や発達障がいの診断を受けたり、もしくはその疑いが危惧される場合に、公的機関や専門家から「ちょっと様子を見ましょう」と療育を先延ばしされることもあると聞きます。より多くの機会でABAや療育が紹介され認知度が上がり、診断を機に1つでも具体的に親が何をすれば良いのか教えてくれるようなシステムに、さらには、紹介された徳島県のように、公的機関でもABAを使った教育が受けられるような体制に徐々に変わっていくと嬉しいです。  今度福島県での取り組みもテレビで紹介されて欲しいですね。

渡米日記2

 アメリカ到着後、結局どこにも動けずに24時間寝続けてしまいました。朝ごはん付きのホテルで良かった。オムレツや目玉焼きをオーダーすると、その場で作ってくれるんですよね。「ええ・・と、玉ねぎに、ベーコンに、チーズに、トマトに、ほうれん草に、マッシュルームに・・・。それからポテトとソーセージも。」アメリカにいた時でも普段からこんなにバカでかいオムレツを毎日食べていたわけではないが。ああ、久しぶりのアメリカっぽい。ちょっと良い目のホテルにしておいて良かった。  体はまだ全快ではないけれど、昔お世話になった先生と予定通り夕飯を一緒にすることにしました。その先生は当時も私の勤める学校区のディレクター(日本で言えば、地方の教育委員会の長とかに近いかな?)をやっていて、親からもかなり信頼のあった敏腕な方なんです。地下鉄を降りたら、何だかオシャレなレストランや町並みが並ぶ。カリフォルニアのOaklandって知ってます?全米でも屈指の治安の悪い街なのですが、でもその治安の悪い同じ市の中で、オシャレで高級なところも混在するんです。不思議ですよね。ここでは何だかオシャレな人たちが歩道を歩き回り、治安の危険さはまず感じられない。地下鉄の駅のすぐ近く、子連れでも大丈夫そうなカジュアルなお店に入り、メキシカン(メキシコ料理)を。ああ、やはりカリフォルニアに行ったら、メキシカンだよねえ。日本では食べられないからねえ。ブリトーだよねえ、サルサだよねえ・・・うまい。体調が良ければもっと良かった。  今先生が働いていらっしゃる小さな学校区はサンフランシスコ空港の近くらしく、面白いことに、なぜか自閉症があまり目立たず、大きな問題ではないらしいんです。ええ?自閉症が別に目立たない?ちなみにアメリカの教育会でもやはり自閉症は大きな問題で、どうしても普通の教え方では中々スキルが上達していかない子どもや、問題行動を起こしてしまう子ども多く、この教えづらさから、親と学校とも「何が適切な教育なのか?」を巡って対立してしまうこともつながったり、中には法廷での戦いにまでもつれ込むことも多いのです。ちなみにこの先生と私は昔の戦友というか、親側と学校側が対立する一番難しいケースに私たちが出動して、その対立を何時間にも渡る話し合いで合意に持っていくようなことが何度もありました。メチャクチャ大変でしたが、今となれば懐かしい

渡米日記1

 アメリカに久々に行ってきました。おかげさまで最近生徒さんの数も増え、普段どうしても仕事中心の生活になってしまうことが多く、今回の旅は仕事をほんの少しにして、昔の友人にあったり、美味しいものを食べたり、なるべくリラックスした旅を計画しました。飛行機に乗ったら、まだ1歳にもなっていない息子はご飯を食べてすぐに簡易ベッドで眠り、こちらもワインなど飲んでくつろいで、「はあ」と落ち着いた瞬間に調子が悪くなりました。寒くって震えが止まらないんです。休みになってリラックスすると、いきなり体調を崩すときってありません?年取ってくると、段々リラックスが難しくなって、やっぱり休みでも何だかバタバタ動いてしまうこともあったかなあ。最近休みはしっかりと取っていたつもりだったのに、ああ、アメリカ旅行までして初めてリラックスするって、何だかねえ。とほほ。折角の旅行が・・・。結局ブルブル震えながらあまりぐっすり眠れるわけでもなく、げっそりしながらアメリカに到着。入国審査では、「You, go there!」みたいな無礼な命令をされつつ、理由も告げられないままやっぱり無駄に何十分も引きとめられて、ますますげっそりしながら到着ロビーに着きました。  空港でちょっと動けないので、少しお昼ご飯でも食べてからにしようかと、家内がサンドイッチでも買ってくると、「こ、この量は!」久々のアメリカン・サイズ。そういえば、こんな量が当たり前だったっけ・・・。サンドイッチ二つとスープだけなのに、フライドポテトは山のようについているし、スープは丼ぶりかと思う大きさで、ご飯出されるだけ食べたら、体を壊すんだよね・・・。久しぶりに食べ物を残して捨ててきてしまいました。  本当はレンタカーでそのままホテルに向かうはずであったのだけれど、あまりにげっそりしている旦那を見て、家内がレンタカーをキャンセルして、そのまま地下鉄で移動することにしました。赤ちゃんと病人連れて、家内も本当に大変だねえと思いつつも、体は動かず。しかしサンフランシスコの空港は本当に地下鉄が便利で、下手に怖そうなタクシー運ちゃんとやり取りして、いくら取られるのかドキドキしながらタクシーに乗るより、そのまま地下鉄一本でホテルまで到着できてしまうのでした。地下鉄の乗り降りは、さすが障害者にも優しいアメリカというか、地下鉄の車両とホームとの段差が非常に小さく

ソーシャル・スキル・トレーニング

 6月19日(日曜日)に東京の中目黒で、第4回講演会を「ソーシャル・スキル・トレーニング」題材に行います。興味のある方はぜひご参加ください。(詳しくはwww.kojitakeshima.comまで。)  ソーシャル・スキル・トレーニングは、本当に難しい題材の一つです。私もソーシャルスキルに関する本や研究はたくさん読みましたが、「この教科書を読めば、ソーシャルスキルがわかる」「段階別に分類されて、非常にわかりやすい」というような代表作的な本が私も見つけられないからです。私も実際に療育を行う際は、いろんな本や研究のいろんな部分をつなぎ合わせて行っている次第で、私自身の臨床経験に頼る部分も大きいのです。今回講演会に題材として取り上げることで、「ソーシャル・スキル・トレーニングを、私ならこう分析して、こうやって行うという」という実際のところを共有し、実際にお子様を療育をされている皆様に、ヒント・手助けになることを伝えられれば良いと考えています。  私の一番のテーマは、「実際に使えるレベルにまでスキルを持っていけるか?」ということです。というのも、いろんな子がスキルが使えるのだけれど使わない(can't do ではなくwon't do)というか、「やれるけど、やらない」という場合が多いのです。例えば視線合わせのスキルをとっても、自分が視線を合わせたいときはがっつり見られるのに、大人が話しかけるときは目をそらせるとか、よくありますよね。視線が合わせられないのではなく、視線を合わせる動機や、視線を合わせを強化する好子・強化子が自然の生活の中にないのです。視線合わせという行動だけを見るのではなく、その機能というか「どうやったら、人と視線を合わせたくなるのか?」への分析が大切になるのです。  スキルに対する動機の部分の分析は、よく見られるソーシャル・スキル・トレーニングでも弱い場合が多いです。例えば、ゲームに負けて泣き叫ぶ子どもに、「負けても泣き叫んで癇癪を起こさない(泣かずにゲームを遂行する)こと」を教える場合があるのですが、まず第一に、負けたぐらいでどうしてそこまで泣き叫ばなければいけないのでしょう?と私は考えます。ソーシャル・トレーニングの結果、その子どもの様子を見たときに、「泣かずにゲームを遂行する」という同じ行動をしていたとしても、「泣き叫びたいほど悔

NHKで紹介された自閉症

 ちょっと遅れますが、5月6日に 「自閉スペクトラム症 100万人 ~未来を拓く最新研究~」という題名でNHKでも自閉症診断の最新研究が取り上げられましたね。やはり何と言ってもNHKへの日本国民への影響を大きいですから、本当にこう言った企画が頻繁に取り上げられて欲しいです。  番組は診断の研究の最前線に焦点が置かれた番組構成になっていたので、診断の後の治療教育については比較的簡単に紹介された程度でした。紹介された部分も、最新のロボット機器を使った教育介入や最近話題になったオキシトシンの研究などで、話題性というか、「皆の目や興味を引くもの」が中心でした。オキシトシンやロボットは最近の話で、まだ実際に自閉症診断を受けた人への療育・介入として使えるレベルまで全然行っていないのに、そればかりが紹介されて、ABAを代表とする「効果が実証されているもの」や「今までにすでに役に立つやり方が分かっていること」ことは取りあげられないのは残念でした。  早期発見は最近ようやく皆さん重要性に気づき始めた印象もありますが、その後の早期療育にも同等の重要性があり、研究だけでなく実際の教育現場に力のある専門家のチームを送り込む必要があることは、まだ浸透していないようです。ABAだけでなく、専門性のある特別支援の教師、言語療法士、作業療法士など、様々な角度から適切な教育を受けられる体制をこれから作り上げていく必要があるのです。  

自閉症から見る「関わることの意味」:テレビ番組にて

 前回のブログで少しだけ「テレビの取材がきて・・・」と紹介しましたが、3月21日(月曜日)の夜7時から11時に放映される、TBSテレビ60周年特別企画「生命38億年スペシャル 人間とは何だ・・・!?」と言うテレビ番組で、私が名古屋の教室で療育をしている様子が取り上げられることになりました。番組についての詳しい情報は、番組のウェブサイト http://www.tbs.co.jp/ningentoha2016/ を見てください。私も実際にウェブサイトに行って「放送内容はこちら」のボタンを押してみたら、なんと私の写真もすでに載っていました。「いつのまに・・・。」まあ、そんなもんですねえ。・・・と言うことは、多分出るのでしょう。  私はテレビの取材を受けるのが初めてなんです。本当に時間のかかる大変な作業ですね。よくテレビに出ておられる先生もおられますが(テレビの製作側の方も含めて)、「よくやるなあ」と言う感想です。勉強になりました。去年の秋頃から数回に渡りミーティングがあって、その後カメラさんが来て3回にわたって撮影したので、5−6ヶ月以上に渡る期間がありました。こういった長い取材時間を取っても、実際に放映されるものは撮影したものの10分の1にもならないんじゃないですかね。編集の段階で随分カットされてしまうようです。全くもったいない。また、カットして短くなった分、一般に分かりやすくはなったのでしょうが、誤解される部分もあるでしょうし、どうしてもこちらが「ぜひ伝わって欲しい」と思っていたような細かな内容は伝わりにくくなりますよね。それがテレビと言うものと言われれば、それまでなんですけどね。  もちろんテレビ番組自体はゴールデンタイムで放映されることもあって、「自閉症の番組」と言う堅苦しいものではなく、「人はなぜモメるのか?」という一般に興味がわくようなことを対象としています。実は私もそこが気に入ってたんですよ。「自閉症」をテーマにするとあまりに真面目になって、重くなりがちですよね。でも、面白くなければやっぱり視聴者は見ませんからね。また、松たか子さんと安住紳一郎さんが司会をされるという番組というのも、なんとなく「真面目にやってそうな」印象じゃありません?実はこの特番はシリーズもので、私もこのシリーズは見たことがないのですが、聞くところによるとそれなりに定評があるらしいので

個別教育目標(IEP)とカリキュラム

 「学校」と言うと、どんな印象を持つでしょうか?楽しい思い出が多い方もいらっしゃるでしょうし、逆に楽しい思い出よりお辛い思い出が多い方もいるでしょう。私の場合はアメリカにいる時は学校で勤務していることが多かったため、自分自身が学ぶ場所と言うよりも、すでに職場なイメージが強くついてしまいました。大学院で心理・ABAの専門家として専門的な教育を受けながらも、卒業後は学校など教員が主にリードを取って活躍する「学校教育界」に身を置く経験が長かったので、その現場から学ぶことも多かったように思います。そこで学んだことの一つが「カリキュラム」です。  ABAや心理的なアプローチの場合、個別を基本原則としている場合が多く、個人に合わせて目標を立てて、それを達成しようとします。しかし、学校教育的なアプローチでは、「カリキュラム」を使うことにより、個人個人ではなくクラス全体に行う集団指導を目指します。私は学校教育の専門家ではないので、カリキュラムとは何かについて説明するのもおこがましい話ですが、大きく言えば1年間生徒に何をどれだけ、どうやって教えるのか大まかな流れを示すものです。現実的には、先生自身がそのカリキュラムを決めなくても、一般にどの教科書を使うか決め、どれだけの時間をどの教科に当てるのかを決定することで、すでに何をどれだけ教えるのかが決まってしまいますから、自然に「カリキュラムに沿って」教えることになっています。  特別支援教育ではどうでしょう?アメリカでは特別支援学級において「IEP(個別教育目標)」を立てることが義務づけられています。しかし意外かもしれませんが、それは完全個別ということではありません。学校教育ではあくまで集団での教育を目指しています。必ずしも使う教科書は決まっていませんが、特別支援でお「カリキュラム」は同時に存在するもので、それにそって学校は教えるけれど、それでは足りない個別の部分のみを「IEP」に形にしていくのです。ですから、「IEPを見れば、その子の成長がわかる」という発言は必ずしも適切ではなく、IEP以外にもカリキュラムにそって色々なことを教えているのが当然なので、それ以外の学習もあってしかるべきなのです。  現在私は小集団の教室を運営していますが、個別の目標と、集団で行うことの両方を目指しています。集団で行うことは「カリキュラムがある」と言っ

知的遅れのある子の個別目標

 新年の抱負は立てましたでしょうか?私はフランス語で「はらぺこあおむし」の絵本を読んでうちの息子に聞かせたいと思いつつ、すでに3日坊主で終わるような気もしている今日この頃です。なんでフランス語?意味はないです。特に子どもにフランス語を教えようという気もないので、私の趣味です。なんとなく面白そうな気がしません?フランス語で「はらぺこあおむし」を読んでいるのをYouTubeで検索すると、何人かの子(多分フランス人)によって読まれたバージョンがあって(画像は絵本のままです)。本文にはないのですが、絵本の最初と最後に、多分葉っぱを食べる音を表現したであろう言葉が出てくるんです。英語で言うところの、crunch crunch (クランチクランチ:ポテトチップス等固い物をバリバリ食べる音)に近いようなことだと思うんですけれど、フランス語のRの音って特別ですよね。それがどうにも日本語のカタカナではとても表現できない音で、子供が言っていると特に可愛いんですよ。皆様も見てみてください。  知的に遅れがあるというか、早期療育をしても普通学級に行くほどは知的な能力が伸びなかった場合、その後の目標に困る場合が多くあります。というのも、早期療育の段階の目標は、模倣だったり、マッチングだったり、物の名前を識別・弁別することを教えたり、定型発達になるべく追いつくための療育です。ABAには多数の教科書的な本も存在するので、比較的簡単にそこの中から目標を選ぶことができることが多いです。しかし早期療育がおわると急にそう言った教科書的な存在が少なくなってしまいます。その後の方向性は、必ずしも定型発達に追いつこうとするのではありません。それぞれのレベルで、将来子供がなるべく生活面・経済面でも自立していくようにスキルを教え、その子の世界を広げていくことになりますが、まあそれは定型発達の子供と同じ方向性ですね。  私の場合、1)お勉強的なこと(読み・書き・算数)、2)人とのコミュニケーション、3)生活関連・身体自立のこと、4)趣味・自由時間のこと、5)人と一緒の活動や体を動かすこと、この5つは欠かさないように行きます。もちろん、学校で行われるべきなこと、家庭で行われるべきなこと、塾や課外活動的に行われること、などあるので、親が全てを教えるということではなく、それら全ての場面の学習を合わせるとこの5つの領

言葉の使い方を教える

 あけましておめでとうございます。出身地である名古屋に帰り、日本で療育を始めて丸3年経ちました。教室に療育に来てくださる方、講演会に来てくださる方、いつもブログを読んでくださる方、ありがとうございます。2016年もよろしくお願いします。  昨年はどうでしたか?お陰様で私自身は公私ともに充実した一年を過ごせました。仕事面では昨年から講演会も本格的に始め、教室ではこれまで教室に通ってくださった生徒さん達が順調に成長しているところを見ることができました。個人としては子供も生まれ、今日は笑っただの、泣き止まないだの、首が座っただのと一喜一憂し、泣き止まないから一緒に階段を上ったり降りたり、歌を歌ったり絵本を読んだり。気がつけば日々は去り、手入れのされない頭は薄くなり白髪も増え、そんな時に限ってテレビの取材があったりする。ああ、もうちょっと可愛かった頃に撮ってくれれば良かったのに・・・。人生そんなもんですね。(「可愛かった」で引っかかった?そうです。その通りです。誰が何と言おうと昔は「可愛かった」ことにしておこう。)テレビについては、また放送されそうになったら報告しますね。実は全部カットされたりして・・・。  ちなみに2回目の講演会を2月7日の日曜日に、場所は変えますが再度東京で行うことになりました。今度は言語行動(Verbal BehaviorもしくはVB)をテーマに行います。詳しくはwww.kojitakeshima.comをごらんください。  ということで、言葉を教えることについて今回は少し話します。通常学級でも「国語」は高校まで主要科目になっていますよね。大学では「コミュニケーション」なども授業で取ることができます。話すこと、そして他人と意思疎通を図るということは、一生学び続けるといっても良いでしょう。それだけ人にとって重要で、またそれだけ難しいということでもあると思います。  これまでの言語の理論は基本的に言語の意味について、そして「名詞」「動詞」「副詞」などの文法や構成についてが中心に語られてきました。行動分析(ABA)では「言語行動」というちょっと違った観点からの分析を使います。具体例を言えば、「その時計良いね。」という言葉があると、これまでの通常の言語分析の観点からすれば、名詞があって形容詞があってという構成を分析するかもしれません。しかし、行動分析に