2015年11月26日木曜日

どれくらい教育に(療育に)時間がかかるの?

 久しぶりにおじいちゃんネタでいきますね。いつも元気なおじいちゃん。やはりいつもなぜか焦っています。先日今年卒寿のおじいちゃんから手紙が届きました。開くと、なんと11月だと言うのに子どもへのお年玉が入っていました。お・・・お年玉?なぜ今頃?焦るタイプとは思っていたけれど、さすがに年が開ける前にお年玉をくれる人は、おじいちゃんしかいないでしょう。お礼の電話をかけると「もういつ死んでもおかしくないで。でも、死んでしまってからじゃしょうがないからのう。先にやっといた。ほら、先もらっとかなあかんわ。じゃあのう。(ガチャン)」と手短に切られてしまいました。この間も自転車に缶詰いっぱい積んでフラフラ運転してきたくらいだから、ずいぶん丈夫なはずなんだけれど・・・・。そんなに焦ってどうするんでしょうねえ。
 おじいちゃんほどは焦っていない私でも、教育の成果のあがるスピードの遅さに、時にくじけそうになってしまいます。例えば、「ぶどう」と言われてぶどうを指差し、「おにぎり」と言われておにぎりを指差しすることを教えるのに、半年かかる場合もあります。もっと言えば、半年かかってもできないこともあります。「ぶどう」、「おにぎり」、「くるま」の絵が並んでいる時に、もう一つ同じぶどうの絵を渡されたら、「おにぎり」や「くるま」でなくぶどうと一緒に合わせること(マッチング)でも、3ヶ月かかる場合もあります。
 自閉症の診断を受けておられるお子様の多くは、学ぶスピード全体が遅いお子様も多くおられます。また同時に、学んだスキルを使いたいモチベーションが異常に低かったり、さらに言えば、新しい活動は全て拒否したりといった傾向が強い場合が多いのです。ですから私の教室では、教えるだけでなくモチベーションを高めたり、教えた力が実際の場面で使えるようになることに焦点を当てています。「ぶどう」を教えるなら、指差しやマッチングができるだけではなく、「ぶどう狩り」について絵本を読んで、模擬的なぶどう狩りを教室でやって、積極的にぶどうを採ったり、指差ししたり、「ぶどう」と言って欲しいのです。「ミックスジュース」の絵本を読んで、ミックスジュースの絵を描かせて、ぶどうの色で絵を描いたり、ジュースを飲む真似をしたり、ミックスジュースの歌を真似したり、粘土でぶどうを作ったり、こういったことが楽しくなって、やりたくなって欲しいのです。
 こういったモチベーションを上げる過程というのは、実は教えるよりもさらに時間がかかることが多いのです。多くの場合、子どもにとって課題を簡単にしてやりやすくしてあげたり、(繰り返しの好きな子どもが多いので)何度も何度も繰り返し(嫌がっても泣き叫んでも)やらせていったり、また、子どもが好きなiPadや他に好きなことを混ぜ合わせることで、徐々に好きになっていきます。一つのことが好きになるのに、場合によっては3ヶ月かかります。場合によっては3ヶ月みっちりやっても好きにならない場合もあります。でも、こういった活動を地道にいくつもやっていくと、徐々に新しいことが1つ増え、2つ増え、そして新しいことが好きになるまでの時間も少しずつ短くなっていくのです。長期間で見ていると、「やりたい」という動機が増えてくるのですから、子どもが「子どもらしく」なってきます。「やりたい」ことが増えた子ほど、他のことを学べる(学びたい)ことも増えてきます。
 療育を始めたばかりの状態を見ると、子どもが全然やる気がないのに、「やったー。めっちゃ楽しいよ!ほら、こんなこともできる!」とめっちゃテンションをあげて盛り上げるお笑い芸人みたいなもんです。笑ってもらえなくても、何べんも何べんも繰り返して、徐々に子どもの笑ってもらえるものを増やすんです。変わったお仕事だと思いませんか?本当に地味で気長な作業のです。
 ちなみに、好きなことを増やしていくというのは、定型発達をしている子どもでも、共通していると思います。テンション上がって楽しんで帰ってもらうために工夫をした教育をやっていると、「嫌なことをやらされている」教育と比較して、短期的には伸び幅が実際には少ないかもしれないのです。しかし、長期的に見ると断然楽しい方が、教えられたことを実際に使ったり、家で同じことをやってみたりするので、「教えたことだけ」ではなく、他のことを学んだりもしてくれるので、子ども全体の成長という面で大きく影響を与えます。
 教える側に立つ人間なら、「教育には時間がかかる」ということが頭ではわかっているはずなのですが、やはり目に見えて成果が出ないと、くじけてしまいやすいのです。逆に簡単に効果が出る短絡的な教育に走りやすいのです。子どもが「やりたい」「教えられたことを使いたい」ということを目標にすると、時間がかかりすぐには成果が見えにくいのですが、それが一番大切なことだと思います。

2015年11月8日日曜日

問題行動の対処法

 私の子どもも3ヶ月を過ぎて、徐々に首が座ってきました。最近は構って欲しくて泣いてばかりいますね。赤ちゃんにとって泣くことは大切なことです。でもあんまりひどくても一緒にいる人が疲れてしまいますよね。ベッドに置いたり、座ったりすると泣くんですよね。「抱っこしろ!歌え!踊れ!」といつも要求しているような感じです。車に乗せると寝るという話もよく聞きます。「夜泣きがひどくて、あんまり泣くので、夜中に1時間ぐらい車を運転して回った。」なんてこともあるでしょう。うちは車は運転しないのだけれど、抱っこして階段を登ったり降りたりすると、泣き止むことが多いのです。登ったり降りたり、気がつくと汗だくにさせられています。赤ちゃんの泣く力は強い。「歌え!踊れ!階段登れ!」とだんだん泣くことも増える・・・。
 最近スマホを使って階段をどれくらい登ったのか、スマホがカウントして数えてくれることに気づきました。グラフにしてくれるんです。行動分析家にグラフを見せると、断然意欲が湧いてくるんです。「高いデータポイントのグラフが見たい!」・・・危ないですね。階段登りは「子どもが泣くから・・・」というよりも、大人のエクササイズに変わってきました。先日記録を更新して、130階分登ってしまいました。・・・うーん。これでまたぎっくり腰になったらどうしよう?
 なんの話でしたっけ?そう、問題行動。「泣く」というのも問題行動の一つになる場合もありますが、「⚪️⚪️の問題行動があるんです。⚪️⚪️(行動)が起こったら、どうやって対処したら良いんでしょう?」という相談もよく受けます。しかし、質問自体が(見ている方向性)やや間違っているのです。実は問題行動は、「起こってしまってからどう対処するか?」ではなく、「どうやって次に起こらないように工夫するか?」が一番大切なのです。私がよく言うのは「一度起こってしまったら、もうダメージが出てしまったので、その時はダメージ・コントロールをするしかないのです。しかし、ダメージ・コントロールで将来の問題行動を下げることにはならないのです。次にどうやって問題行動を起こさないか?を考えて何かしない限り、また問題行動は起こります」ということです。実は問題行動を下げることと、問題行動が起こった時の対処方法(ダメージ・コントロール)は全然別のことなのです。
 では、どうやって問題行動を起こさないか?その理由をなくす必要があり、それを機能分析と呼びます。要は、子どもが何か問題行動を起こさないといけない状況にあるのです。その状況をなんとか変えてあげる(もしくは、問題行動以外の方法で切り抜けることを教えてあげる)必要があるのです。例えば、課題を与えられて問題行動を起こすのなら、課題自体が難しすぎるのかもしれません。自閉症の診断があったりすると、非常にくじけやすい子どもが多いので「ちょっと頑張ればできる課題なのに・・・」とこちらが思っても、その「ちょっとの努力」が非常に辛くて問題行動を起こす場合も多いです。「本当に簡単な」課題から始めて、徐々に簡単にしてあげるというような、丁寧な教え方が必要になるのです。問題行動を起こしてから、「ダメでしょ!」というのではなく、最初から簡単な課題を丁寧に積み上げることがあれば、問題行動にならないのです。
 「余暇の時間に一人で自己刺激をしてしまう」ということも、同様です。余暇の時間を上手に過ごすのが非常に難しい子どもが多いのです。人が「これをやろう」と遊びに誘うと、泣いて嫌がってしまう子もいます。余暇の時間に適切な遊びをするようにさせるには、人の誘う遊びに参加することを教えるには、実は本当にたくさんの時間と労力がかかります。というのも、「自己刺激よりも適切な遊びの方が楽しい」というように、遊びの価値を変える必要があるからです。「遊べてる!よくできたね。」と数回褒めるだけではないのです。本当に遊び自体が楽しくなるように、何十回・時には何百回と繰り返して単純遊びをやってあげたり、色んな遊びを体験させてあげる必要があるのです。
 療育をされている方の中には、こういった「余暇の時間を適切に過ごす」ことにあまり価値を置かない方もいます。これは、何かを教えるわけではないので、効果が見えにくいからかもしれません。「すっごく時間をかけて本当に少しの遊びをするようになる」ということなのです。「それよりは、ひらがなの一つでも読めるようになった方が良い」と思ってしまうのも分からないではないです。しかし、「将来一人でも遊べる」「他の子と一緒に活動ができる」「人の誘った遊びを一緒にやってくれる」こういったことは、非常に大切になります。これができると、将来親と一緒にいない時、学校に行った時、非常に教えやすい子になるからです。長い目で見ると、この方が絶対に子どもにとってたくさんのスキルを教えることに繋がる可能性が高いのです。
 これは自閉症でなくて定型発達の子どもでも、同様のことだと思います。何かが起こってから、それを対処するのではなく(後手後手に回るのではなく)、最初から問題行動が起こらないようにこちらから積極的に攻めるのです(先手必勝)。「勉強は楽しい」「学校で遊びたい」という動機を育てるために、子どもに合わせて勉強のレベルを変えてあげて、学校での遊びの活動も積極的に先生が参加して、「楽しい」というように変えるような工夫をしている学校では、問題行動が起こる理由がなくなってくるのです。もちろん大きくなってから先生が一緒に遊んでいる訳にもいかないので、なるべく小さいうちにこういった「攻める」教育の姿勢が必要なのです。
 そう言えば、先日京都の国際学会で奥田先生の発表の英語通訳をさせて頂いたのですが、その時にも会場からこういった質問がありました。「問題行動が起こった時にはどうするのか?」奥田先生の返答は「問題行動を起こさないようにする必要がある」ということでした。質問者は「でも、どうすれば良いの?」と質問を繰り返します。問題行動は、「起こってしまってからどう対処するか?」ではなく、「どうやって次に起こらないように工夫するか?」が一番大切だという部分がなかなか伝わらないことも現状です。「問題を起こさないために、療育でスキルや強化子(好子)の幅を広げる」という作業が大切なのです。