会話のスキル

 先日久しぶりに献血をして来ました。私献血好きなんです、と言ってもやはり年に何度も行けませんね。やはりそれなりに時間に余裕がないとできない。体力的にもある程度余裕がないと行けない。言って気づきました。あまり余裕のない生活を送っていたんですね・・・とほほ。この余裕を感じにいっているのかもしれない。でも献血すると何となく人のためになった気がしません?特に夏休みなんかは事故等が多いから、絶対血が足らなくて困っている人がいるはずです。しかも献血ルームって奇麗な所ありますよね。色々ただでジュースとかもらえるし。高校生のときは、「ただ」のお菓子やジュースをもらいに友達と献血に行っていました。行くたびに色んな新しいシステムが導入されていて、感心します。今回は、席の準備ができるとピーピーって機械がなって知らせるというシステムが導入されていました。レストランの席待ちみたいな感じですね。こういう色々なシステムがあるのは良いのですが、ベルトコンベアー式で色々な検査を通り抜けるので、次の人に会うたびに「名前、生年月日、血液型」と聞かれるのはイヤですね。まあ血液に間違いがあっては行けないので当たり前なのですが、やはり大きな声で生年月日を言う、しかも繰り返すのが嫌な年齢になりましたね。 やだやだ。
 繰り返すと言えば、自閉傾向がありながらも言葉をよく話すようになった子どもで、よく言われることなのですが、「同じことを何度も繰り返してしまう。その場にそぐわなくても、言ってしまう。」ということです。これは、非常に複雑な問題だと思いますが、今回は果敢にチャレンジしてみます。 これは、会話の技術という事以上にまず、会話の動機が絡んで来るからだと思います。会話をするということは、以下の二つの動機が必要だと思います。
動機1:相手(聞き手)の注意を引きたい。
動機2:話したい内容がある(共有したい経験、思い出したい経験がある)。
 「同じ事を繰り返してしまう」というのは、もしかしたら、相手の注意を引きたいと言う動機1はあっても、話す内容がないという動機の2が不十分である(話す内容が一つしか思いつかない)のかもしれません。逆に話したい内容があっても、相手の注意を引きたい動機がなければ、会話ではなく独り言を繰り返すことになるかもしれません。やはり、どちらが欠けていてもだめなのでしょう。動機が絡んでいると、ただ「教える」だけではダメなのです。いくら奇麗に話す言語能力を教えたとしても、相手の注意を引きたくないのであれば、人には話さないでしょう?話したい内容がなければ、話せないでしょう?逆に言えば、こういった2つの動機が両方あって、下手でもどんどん話して行くうちにそれが練習となって勝手に(こちらが教えなくても)言語能力を向上させていくのかもしれません。 動機を変えるのは教えるよりも難しいです。
 まずは、「人の注意を引きたい」という動機。これは、まずかなりに幼いうちから、人好きにさせていくしなないのです。色んな楽しい人とのやり取りを経験する(人とのやり取りが楽しい)ことで初めて、人は、人とのやり取りをもっとやりたくなります。人が振り向いて、人がこっちに話しかけてくれると楽しいから、もっと人の気を引きたい。これが、人の注意を引きたいという動機であるはずです。ですから、私はお勉強だけでなく、「人とのやり取り」を中心としたセラピーを心がけていますが、簡単ではありません。というのも、やり取りが楽しくないから、私の所に来る事が多いのです。最初は持ち上げたり、くすぐったり、体で遊ぶことをやっていきます。それ以外にも、「繰り返し」を使う事が多いです。自閉症の子は何かを繰り返すことが好きな場合が多いので、私はこれを大いに利用します。というのも、何度も繰り返す事で、これまで好きでなかったことが好きになるのです。例えば本読み。私の所に来る生徒さんの場合、本を読んでもらう事が最初から好きな子は、ほとんどいません。それでも、何度も繰り返すと、ほぼ全員好きになり、必死に絵本を見る様になります。何故だかは分かりませんが、やはり繰り返しが好きなのでしょう。新しい本を出すと、一様に皆そっぽを向きます。新しいので(繰り返されてないので)、読みたくないのです。でも、それも繰り返して行くと、好きになって見入ってくるのです。不思議です。他にも徐々に色んな活動ややり取りを繰り返して、彼らの「好き」なやり取りを増やすのです。
 次は、「話したい内容がある」です。これは、上記のような楽しいやり取りをまず増やして行くことが必要です。その次に、過去のことを話す練習をしていきます。過去のことを話すことで、過去にした楽しい思い出がよみがえり、楽しいという経験をさせることが必要になります。こうすることで、話したいという動機を増やすのです。言葉が話せるようになると、教室の終わりのおやつの時間に、おやつをご褒美に色んな質問をします。「今日何やった?」「本は何読んだ?」「今日お絵描きは何描いた?」こういった質問に答えられるようになることは、過去の事を話す始めの一歩となるでしょう。プロンプトとして、携帯電話(スマホ)の写真をお勧めします。色んな楽しいことを経験するときは、それを一つ一つ写真に撮って行くと良いのです。そうすることで、後で見ながら話をすることができます。「一緒に楽しいことを思い出すこと」が楽しいという経験があって初めて、「次にもお母さんと楽しい事を話したい」という動機が生まれるのです。私たちも、楽しい事があると、それをどうやって話そうか、考えません?究極には、お笑い芸人の方の「ネタ」ということです。人を楽しませるために、一緒に楽しむために、経験した事を話にまとめたいという動機がある人程、話し上手になっていくのです。
 ここで難しいのは、自閉症の子は繰り返しが好きということです。何度も同じ事を言いたいという動機が始めからある場合が多いのです。その動機に打ち勝つだけ、「新しい事も楽しい」「新しい方が楽しい」という経験を積ませなければ行けないのです。難しいでしょう?でも、時間をかけると徐々に変って行きます。時間をかける価値があることだと思います。一緒に楽しい経験を積むだけなのですから。

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