問題行動(癇癪):要求が通ることとの反比例

 教室の時間の合間におやつ代わりにゆで卵を食べようと思いました。冷蔵庫に入っていたから、やっぱりちょっと暖めようかな。電子レンジでゆで卵を暖めると、爆発するって聞いたことあります?怖いですよね。でも、ちょっとだけなら大丈夫かな。少しだけ暖めて・・・、ほら、やっぱりちょっとなら爆発しなかった。レンジを開けて手に取ると、お、ちゃんと暖まってる。いっただきまーす。ばん!風船が割れるくらいの音がしましたかね。何が起こったの?手のひらにあるはずの卵は跡形もなく、卵の細かな残骸が床や壁に散らばっています。しかも卵の飛び散り方が半端じゃなくって、まさに爆発。部屋中にゆで卵の小片がばらまかれました。後から見ると部屋の反対側の壁にまでゆで卵の破片がついています。鏡を見ると髪の毛や服にも一杯ついてる。もしかすると、ちょっと目に入ったかもしれない。こんなことで失明しなくて良かった。ああ、生徒来るから片付けなきゃ。しかもぞうきんで床を拭くと、黄身が床のフローリングの板の隙間に入る!ああ、そんな所は・・・。あとで臭くなったら絶対やだ。せっかくの短い休憩時間、エネルギーチャージしてゆったりする予定だったのに、これでその時間も掃除に終わる・・・。とほほ。しかしこの歳になってこんなにビックリすることあるか?というぐらい驚きましたよ。本当に漫画みたいなことってあるんですね。
 爆発と言えば(相変わらずなんでも自閉症につなげる)よく癇癪起こす子っていますよね。それから小さなことでもすぐに、「うきー!」ってなってしまう子。例えばオモチャで遊んでた所に、お父さんがアイスクリームを買って帰ってきて、見た瞬間それに向かって走って行って、手を伸ばすとするじゃないですか。オモチャ持ったままの手でアイス食べようとしてアイスを落としちゃかわいそうなので、「ちょっと、オモチャもったままの手で。」と言うと、「うきー!」と床にひっくり返る。食べるなって言われた訳でもないのに、この反応は一体何だ。お前は猿か?せっかく好きだと思って、楽しい経験を多い浮かべて買って来たアイスクリームなのに、一気にこれで30分も泣き通す。こんなことって、結構ありますよ。
 こういうように、一触即発ですぐに癇癪を起こす子や、物を投げる子、「イヤ!」等と叫ぶ子というのは、思い通りに事が運ばない、自分のやりたいことが言えてない、言わば「食べたい物が食べられずに(やりたいことがやれずに)飢えている」という状態にあることが多いと思うんです。ABAでは機能分析といって、何故そうやった癇癪やら他の問題行動が起こっているのか(何に飢えているのか)を発見し、その理由をなくす(飢餓状態を満たす)方法をとります。しかし、子どものこういう悩みを持たれる家庭の中には、ご両親の話を聞くと「甘やかしたくないから」「いつも欲しい物が手に入るという訳ではないから」「我慢を教えたいから」という理由で、意図せずに本人の飢餓状態を高めてしまう悪循環に陥ってしまっている場合があります。例えば本人が「欲しい」と言っていると、「食べたばかりでしょ」とお母さんは与えない(我慢させる)。これを繰り返して行くと、そのうちに食べ物を見てお母さんが近くにいるだけで、「うきー!」となる訳です。飢えている人に下手に近づくと、襲われて怪我するかもしれません。
  じゃあ、いつまでも甘やかして、「欲しい!」と言うたびにすべてを与えれば良いのでしょうか?そうとも限りません。「飢餓状態をいかに作らないか?」を考える必要があるのです。もしお菓子が欲しくて「うきー」となっているのであれば、まずしばらくは欲しいだけ与えます。要は、ちゃんと要求すれば、そんなに焦って癇癪を起こさなくても、欲しい物は手に入るよ、というメッセージを与える事です。そしてある程度満足して飢餓状態から脱出した時に(問題行動が減った時に)、徐々に「欲しい?じゃあ、この課題をしたら、あげるね。」等と、何かをやらせるようにしたり、「一日5つだけね。今日はもう3つ食べたね。あと2個だね。」と徐々に数を制限したりします。満足さえしていれば、毎回もらえなくても、焦って「うきー」とならずに済む訳です。
 逆に言うと、どうやったら飢餓状態を作り出せるのでしょう?いつもらえるのか予想がつかない様にするんです。「時々もらえるけれど、いつもらえるかはわからない。」これがギャンブルと同じことで、どんどん飢餓状態が高まり、止められなくなってしまいます。
 お勉強がしたくなくて、勉強の「臭い」がしただけでも逃げる子どもがいると思います。いやでいやで、しょうがないんですね。「でも勉強はしなければ行けないでしょう?」と言われる方もいますが、まずは勉強がそんなに嫌でない状態にしなければいけません。問題行動がひどい場合は、まずは一切勉強(っぽい活動)を止める他ありません。一切やめて、問題行動がなくなってから、徐々に簡単な課題を(勉強っぽくない形で)やって行くことが良いでしょう。ゆっくり進めば、勉強がそれ程嫌じゃなくなるはずです。
 「ABAをやる」というと、問題行動があっても「無視してやらせる」という印象を持っている人がいます。確かに本人が嫌がっても、それを無視してやらせる場合もありますが、こういった手法は、本人の状態を考慮した上で選びます。誰でも、いつでもやらせれば良いというものではありません。「無視する」の勘違いは、テレビなんかの影響ですかね。確かにテレビ番組を見ると、そういうように映ってしまうこともありますが、決して「無視すればよい」と誰にでもやっている訳ではありませんし、それが逆効果になる場合もありますので、注意して下さい。

コメント

  1. 初めまして。
    娘のイヤイヤ期の対応で検索していましたら、こちらのサイトを見つけました。
    自閉症児に限らず健常でもABAを学ぶことは良いですね。
    少々、アメリカンな対応の気がしますが、ケースによってとても効果を発揮できそうです。
    私も勉強したいと思います。

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