基軸となる行動:Executive Functioningその2

 外に出たついでにスーパーに買い物によりました。買い物は特に予定していなかったのですが、漂白剤やらお菓子やら卵やら、思ったよりも買ってしまうものです。こういう時に限って妙に混雑していてレジには列ができています。レジで払い終わって袋詰めにするカウンターにかごを置いてから気づきました。あれ?袋がありません。またか。やはり買い物をしようと思って出かけないと、私は買い物袋とかよく忘れます。前回も忘れました。前回は人が少なくて、レジの人に後から言って5円で袋を買いました。5円で買えるなら、なぜ支払いする時に袋がいるかどうか聞いてくれなかったんだ?最近は袋持参が常識なのだろうか?しかも今日はすごい人が並んでいて、レジの人に今さら袋を買いたいことが言いにくい。車に行けば袋もあるのだけれど、荷物を置いて車に行くのも面倒くさい。しょうがないので、手に全部抱えて車まで行くことにしました。ちょっと無理かな?手にも小さなものをごちゃごちゃ抱えて、色んなものをジャンバーのポケットに詰めて、これじゃなんだか下手な万引きだよ。誰かに見られてないかな?でもこれくらい持てるよ。よし・・・ガシャ。卵を落としました。あーあ。よりによって落とすのは卵。ついてない。ただでさえ万引きおじさんみたいにポケットに色々詰め込んでいるので、人からの注目を受けたくない。床を汚してしまいましたが、拭くものもない。うーん、どうしよう?買ったものを捨ててその場からいなくなりたい。
 こんなことありません?私だけ?トロいですよね。とほほ。 ちなみにしばらくすると店員さんがやってきて、床を拭いてくれて、しかも、卵を替えてくれると言います。「え?良いんですか?」ちょっと嬉しそうな図々しい私。店員さんは嫌そうな顔も見せずに卵を取りに走りました。何て親切な人なんでしょう。世の中いい人ばかりですね。替えてもらった卵を手に、何とかジャンバーにもっと色々詰めて(やっぱり懲りてない私)、やっと車までたどり着きました。ああ、串カツのいいにおい。そうか。途中で入り口で売ってた串カツが気になってたから、ぼんやりして袋を忘れて卵なんか落としたのか。そして親切な人の助けによって、トロい私は今日も一日を乗り越えました。トロくても生きて行けるものです。もちろん串カツもゲットしました。(ブログネタもゲットしたし・・・。)
 高機能の自閉症の子とか、アスペルガーの子等をよく観察すると、言い方悪いのですがトロいように見えるのです。親が見てると要領が悪くて本当にイライラするとよく聞きます。例えば、学校で何か先生に言われた課題をやっているとします。成績の良い子は終わったらすぐに次のことを始めます。片付けたり、次の時間の準備をしたり。でも自閉症の子達は、やれと言われたことだけを額面通りにこなして、そのまま大満足だったりするわけです。次に何をしたら良いかなどは、考えも及ばないのです。これは勉強嫌いで、わざと次の準備をせずにこっそり他事(漫画書いたり落書きしたり)をしている子(何をしたらよいのか、他に何をしたいのかがしっかりと分かっている子)とは少々違います。朝の準備も、起きるのが遅いという以上に、非常に時間がかかる場合が多く、忘れ物もしがちです。人って常に「何をしたら良いのか」又は「何をしたいのか」を考えながら生活していると思うのです。この「何をするか」をあまり考えずに(準備をせずに)行動すると、もちろん物も忘れるし、やることにも時間がかかる訳です。私が買い物で袋を忘れたのも、準備せずに突然行くからです。
 物忘れの多い子どもに、忘れ物に気づいた時に「また忘れ物して!」と叱るのは逆効果です。というのも、忘れ物に気づいた時ではなく、その大分前の準備する段階で失敗が始まっているからです。何を持って行ったら良いのか、どう段取りすれば良いのか考える準備の行動が欠けている場合が多いのです。ただ教える際に注意が必要なのは、「忘れ物はない?ナプキン持った?体操服は?連絡帳は?」と言ってしまっては行けないのです。そうすると、結局忘れ物をチェックしたのは、お母さんになってしまい、お母さんに頼るようになります。専門用語では、プロンプト依存と言います。時間がかかっても、自分でやるように仕向けることが必要なのです。朝の準備をするには、自分から何を朝したら良いのか考えて、段取りを準備させること、それに合わせて朝の準備をしていくことが必要になります。忘れ物は、学校で何があるのかイメージさせたり順番に時間割を見ながら、何が必要なのかチェックすることが必要になります。
 教える際、私の場合は初めに口で説明しながら、一緒にやって行きます。「朝起きたら、まず何をしたら良いのか考えるよ。考えて頭の中で準備しながらやると、やりやすいね。きっと朝の準備が早く済むよ。練習しようね。じゃあ、まず起きたら着替えて・・・・次は何する?・・・歯磨く?ご飯の前に歯を磨くの?そう、ご飯食べて・・・、次は?歯を磨いて・・・、そのままやってごらん。そう、学校の準備のカバンを用意して。」と言った形で説明しながら、「・・・」の所は時間をあげて自分から考えさせるわけです。そうすることで、私が全部言ったことをリピートするのではなく、子どもも参加してやり方を少しずつ一緒に考えて準備するのです。必要であれば最初は紙に書き出しても良いですね。もちろん準備ができたら、褒めてあげて下さい。そして次回から徐々に、「次は?」と言った手助けを減らして行きます。
 準備ができたら、その準備した言わば「時間割」通りにことを進めることが必要なので、一つの活動が終わるごとに、時間割に一度戻ってもう一度何をすべきだったのか確認することが必要です。最初は、「あ、ご飯食べ終わったね。じゃあ次は・・・」と言った感じの手助けが必要になります。決して、「ご飯の後は歯磨きでしょ。さっき自分で準備したでしょ?」と言っては行けません。ちょっと時間をかけてでも自分から時間割をチェックすることをやらせなければいけません。言われずに自分からチェックした場合は、しっかりと褒めますが、しばらく時間を与えても次のことがみつけられなければ、答えを教えてあげても良いです。準備の段階で自分から次のステップが考えられていないのかもしれません。最初から自分で考えた時間割であれば比較的簡単にもう一度思い出すことができるはずです。そして徐々に、「次は・・・」という手助けを減らして行きます。私の場合、ご飯を食べ終わってぼんやりしている子どもには、「ご飯食べ終わったねえ。」(思わせぶりな台詞だけで、自分から気づかせる)なんて言うだけの時もあります。微妙な手助けに変えて行く訳です。
 さらに細かく言えば、着替えや歯磨きと言った活動の一つ一つも考えながら、歯ブラシを濡らして、歯磨き粉をつけて、磨いて、といったことを考えて次に何をするのか準備しながらやると、やりやすくなります。もちろん慣れて早くなれば体が流れを覚えるので、そんな必要はなくなります。(例えば、普通の大人でも旅行に行ったときは、いつもと違う所に歯ブラシがあったりするので、頭で色々と考えながら準備していると思います。普段の家庭ではいつも通りなので、考える必要はないのです。)
 こうやって頭で準備をしながら、活動を一つ一つこなすことを教え、できるようになったら徐々に徐々にスピードを加速させて行くプロセスになるので、はっきり言って非常に時間がかかります。しかししっかり教えると、いつまでも「ほら、体操服忘れたんじゃないの?」言い続ける必要がなくなります。

コメント

  1. いつもブログを楽しく読ませて頂いております。
    朝の準備のとろさには頭を抱えていたのですが、タイムリーな話題に目から鱗で、大変参考になりました。ありがとうございます。
    もし、お時間が有りましたら教えていただきたいのですが、宿題に取り掛かるまでに大変時間がかかり、私が声をかけない限り1時間とかよそ事をして、結局いつも私が注意しなければいけません。
    自分からさっさと取り掛かる良いアイデアがあれば、教えていただけるとありがたいです。

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  2. いつも読んで下さってるんですね。ありがとうございます。宿題は色んな方に共通の悩みです。結果だけ(宿題が終わっていなくて注意される)見れば、健常のお子さんにもよく見られる話ですが、問題が起こる理由は違うかもしれません。簡単に答えられないので、ブログの方で時間がある時に話題として取り上げます。

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  3. 自己暗示的な感じでしょうか?しゃべりながら、忘れ物が無いように確認する、大人でもやりますもんね。

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