学び方それぞれ

 おじいちゃんと一緒にモーニングを食べに行ってきました。「モーニング」ってご存知ですか?名古屋地方で喫茶店に行くと、「モーニングサービス」と称して、コーヒーや紅茶を頼むと、簡単な朝ご飯がサービス(=ただ)でつくんです。良いでしょ?今回は喫茶店ではなくって、コーヒーも飲める喫茶室付きのパン屋さんだったんですが、320円で、コーヒーと160円までの調理パン(種類は色々)が2つ選べるんです。しかも小さなクロワッサンに生クリームが入ったものは、勝手についてきました。すごいでしょ?おじいちゃんは、胃がん手術後順調に月に1キロ体重を増やし、すでに全回復に見えます。さすが。朝ご飯を食べてからでかけたのに関わらず、大きなパンとクロワッサンも普通に食べて、甘いものは「別腹」と言い切っていました。手術で胃を3分の2切り取ったはずなんだけれど・・・。「食べれるようになったね。」と言うと、「まあ、最初の頃は口に手を突っ込んで戻しとったけどな。」と語っていました。やっぱり無理していたか。でも、普通手術後そんなに無理して食べるか?
 春の陽気の暖かさに、車いすのおばあちゃんと歩いて行きました。やっぱり車いすを押して移動するって、やってみないと不便さは分かりませんね。道路も普通に歩ければば何ともないのだけれど、微妙にちょっとした傾斜がかかっていたり、歩道に入るところに段差があったり、車いすを押すからこそ色々なこ とが目 に見えるようになる。というか、ちょっと歩くだけでかなり疲れる。私が疲れるくらいだから、これはおじいちゃんが車いすを押して歩いて行けないはずだ。喫 茶店でも、入り口の片方はドアの所の段差が気になるし、出口はスロープがあるが自転車が止められていて自転車を動かさなければ出られない。障害者がどんなところで問題に突き当たるのか、どんな所が難しいのか、本当にみんな体験してみなければ分からない。
  自閉症の療育は、結構「やってみなければわからない」所が多いと思います。自閉症なんて一概にひとくくりにされているけれど、本当に色んな症状があるんです。ですからそれぞれの問題もかなり異なっていて、車いすのように皆が同じような問題にぶつかるとは言い難い。一般に自閉症の人は、ビジュアルというか視覚を使った教え方が有効であるとよく言われます。これは、耳で聴覚から聞いた言葉はそのまますり抜けてしまうけれど、視覚で指示された事には反応してくれやすいということです。例えば、「じゃあ今から机に戻って」と言われても無視するけれど、机の写真を見せると机に座ってくれることがあります。ただし、実際にやってみると視覚重視というのも微妙に人それぞれなので、そうは簡単に行かないんです。写真をむやみやたらと撮って使えばそれで良いかというと、そうでもない。それぞれに合わせて学習の壁にぶつかった時に、じゃあどうすれば良いのか真剣に考えてくれる人がいることが、療育の重要な所です。
 私も10年以上療育についているので、よく「○○でなかなか先へ進みません。どうしたらよいでしょうか?」と聞かれます。「ドラえもん」のように簡単な解決策のポケットがあって、「じゃあこれ使ってみる?」なんて言えれば良いんですが、残念ながらそんな簡単に解決策はないんです。もちろん出来る限り研究等で使われている方法や、これまでに他の子どもに成功した方法を試したりするのですが、結局の所その子なりの学び方をじっくり観察して、色々試してみる課程でその子特有の解決策を見つけて行くことが、やっぱり一番の方法なんです。ぶっちゃけ色々な問題を可決する便利な解決策のポケットなんて持ち合わせていないんですよ。私だって今になってもそれぞれの子どもの学び方を学ぶというか、「ああしたら良いか、こうしたら良いか」って色々試してそれで徐々に進んで行くという作業を続けています。
 私も療育を始めた頃は、有名な先生は色んなことを知っていて魔法のように問題が解決されるような、有名なABAの会社に勤めればそういうノウハウを学べるような、ABAの経験・これまで積み上げられてきた研究の歴史に、漠然とですが現実離れした期待感を持っていました。まあ、実際にすごい知識を持たれる先生もおられます。例えば、現在のアメリカ行動分析認定協会の会長のドクターCarrは、臨床の問題を持ちかけると、「ああそれは、20○○年の誰々の論文の○○という方法を試せば?」というように、これまでの学術研究雑誌の目次がそのまま頭に入っているような人です。初めて彼に監督してもらった時は、はっきり言ってびびりましたね。それから10年は経ってますが、私は残念ながらそうはなれませんね。一つ一つケースを見て、一緒に解決策を探すだけです。ただし、人離れした能力を持つ人は世の中にそう何人もいないし、実際に療育に普段からそういう天才系の人が一緒にいて手取り足取り指導してくれる必要はないかなと思います。時間をかけてもしっかり解決して行けば良いのです。その問題解決が積み重なって、長期間で大きな違いになってくるのではないでしょうか。

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